JR東日本秋田駅では、毎年正月頃(もしくは年末?)になると、在来線改札内に置かれる物がある。
布が巻かれて装飾された細長い物体(松の内だったので駅事務室のドアにはしめ飾り)

「梵天(ぼんでん)」である。
秋田駅から北東へ1.5キロのところにある、太平山三吉神社(たいへいざん みよし神社。通称三吉神社、三吉さん)で、毎年1月17日に開催される「三吉梵天祭(みよしぼんでんさい)」で奉納されるもの。
※2025年は、参加者確保のため、試験的に日曜日である19日に変更。17日が平日になる2028年以降、変更の可能性あり。
秋田駅では御神酒など供え物とともに、説明も掲出され「この梵天は、今年の梵天祭で実際に奉納するものです。」とある。
梵天や梵天祭については、ウェブマガジン「なんも大学(https://nanmoda.jp/2018/02/1438/)」等が詳しい。
簡単にまとめると、御幣のような神の依代である梵天を奉納する。秋田県内では他にも各地にある。主に秋田市より南に多いようで、夏場に開催されたり、梵天を持って川を渡ったり、沼に入るようなものもある。秋田市内でも、雄和地区や河辺地区で夏場に複数開催されているらしい。
その中でも、秋田市の三吉神社のものが、規模が大きく有名。町内や職場ごとに、先を競って威勢よく、突進するように奉納するので「けんか梵天」と言われる。なお、太平山三吉神社自体も、秋田市内では最大規模の神社。
秋田県内各地の梵天の形状やデザインは、装飾した円筒形の本体の下に、持ち手の棒を付けたものが基本のようだ。沼に入る横手市平鹿町のものは、本体が米俵に飾りを付けたようなもので珍しい。
梵天は秋田ならではのものとされることが多いが、秋田県外にも(起源は共通かと思われるものが)多少あるようだ。ただし、濁らない「ぼんてん」と呼ばれている可能性あり。パソコンやスマートフォンのかな漢字変換システムでは「ぼんてん」では変換できるが、「ぼんでん」は辞書登録されていないものもある。
宇都宮市や京都府宇治市に、わりと知られたものがあるらしい。それらはネットの画像で見る限り、竹竿の先に巨大なポンポンのような吹き流し状のテープを付けたり、台車の上に巨大な御幣を突き出したりしたようなもので、秋田とはかけ離れた面もあるが、共通する面もありそうだ。本来の御幣の形からすれば、秋田が装飾華美になったのかも。
あと、耳かきの反対側のフワフワを「梵天(ぼんてん)」と呼ぶのも、伊達政宗の幼名「梵天丸(ぼんてんまる)」も、これが由来なのだろう。
【18日補足・梵天は、江戸の町火消なんかの「まとい」にも見た目が通じる点があるが、まといは人に対する目印が役目のはずで、他人の空似なのでしょう。】
と、知ったふうなことを並べたのですが、僕は三吉梵天祭にはなじみが薄い。私見では、主に線路(奥羽本線)より東側一帯のお祭りという認識。線路西側に住む者としては、竿燈まつりが身近だから。土崎港曳山まつりと同じく、ちょっと離れた市内のお祭り。
「けんか梵天」はテレビでしか見たことがない。梵天自体は見たことがあるが、印象的なのが、その鮮やかさ。枯れ木と雪の白黒の中に、赤を中心とした梵天が映える。
梵天といえば赤いイメージがあった。
だけど、秋田駅の梵天は緑色だし、全体になんか地味。
裏面は赤だけど、柄や飾りはない
別にデザインに決まりはないらしく、なんも大学サイトで触れているように、きりたんぽメーカーが奉納するのは、きりたんぽをモチーフにした白い梵天。※サイズはどこも同じくらいに見えるが、規格のようなものがあるのかは不明。
秋田駅の梵天は、毎年この色だから、JR東日本は、自社のイメージカラーで緑なのかも。
(再掲)2010年の秋田駅の梵天
16年前とほぼ同じ。奉納した梵天は、返却してもらえなさそうだから、毎年同じ布を調達するのだろうか。竿燈まつりの提灯や屋台では、きちんとしたJRマークが使われているが、梵天では素人が手がきしたっぽいマーク。
以前との違いは奉納者が「秋田駅」から「秋田統括センター」になった点。
JR東日本では、複数の駅や乗務員基地を一体化していて、秋田駅は2022年3月に「秋田営業統括センター」を経て、2024年3月に、乗務員基地の秋田運輸区を吸収して秋田統括センターとなった。今や「駅」は単なる施設名になって、社員が所属して梵天を奉納する、組織名ではなくなったのだった。
さかのぼって正月。秋田市大町二丁目。
道路沿いに梵天が飾られていた
ここにある住宅会社が奉納する梵天だった。
道路標識は直径60センチ
ビニールで覆われているが、本体は赤を中心とした柄入りの布で包まれているようで、七夕飾りを大きくしたような赤い飾りは、秋田駅のものよりボリュームがある。
上記の通り、梵天をよく知らないので、半月も前から、屋外に梵天を出しておくのが一般的なのか分からないし、町内単位で竿燈まつりに参加するエリアでもあるここに梵天があるのが、なんだか場違いに感じてしまった。でも、これこそ、イメージ通りの梵天だ。
【19日追記・各社の報道映像から】
駅にあったのと同一と思われる梵天がもう1本あって、秋田統括センターでは2本を奉納したようだ。参加した社員は、レールと枕木の図柄のある、黒いビニールっぽい(ジャンパーのような)素材のはんてんというかはっぴを着ていた。
さらに、赤系統(たぶん柄入り)の「秋田保線設備技術センター」の梵天も1つあった。そのJRロゴは本格的なもので、頂部の「ほおずき」と呼ばれる部分に表示。
どこかの町内が奉納したと思われる梵天は、秋田統括センターの色違いのような、無地の水色と赤の布が巻かれていた。その他、赤系統の柄入りが圧倒的に多いが、黒や緑色ベースで柄入りの梵天も1本ずつ確認できた。
【20日追記・20日付秋田魁新報より幼稚園児のミニサイズ梵天について】
19日には、外旭川の幼稚園児が子ども梵天を奉納した。赤い柄入りの本物の梵天を先頭に、年長園児38人が「ペットボトルや布で手作りしたミニ梵天を持ち参道を歩いた。」。
写真を見ると、子どもたちの梵天は淡い色合いで柄入りのものが多い。
新聞記事では「子ども梵天」表記もあるが、ミニサイズ梵天の呼称などではなく、子どもが梵天を奉納する行為全体を指すような感じ。