NHKの大相撲中継の文字について。
現在、画面に表示される字幕(テロップ)は、すべてコンピューターのデジタルフォントが使われている。

しこ名の「相撲文字(関連記事)」も手書きではなく、ダイナコムウェア「DF相撲体」。
今日の取組と結果の一覧画面は、わりと最近まで、背景込みの完全CG画面だったはずだが、現在は、場内風景などカメラ画像を背景に表示するようになった(今でも、CG背景の場合もある?)。

相撲に興味はないのだけど、付き合いで見ていたら、そのDF相撲体に気になる文字を見つけた【23日補足・数年前から気になっている】。上の2つの画面にも含まれている。
「一山本」や「一意(かずま)」の、漢数字の「一」である。
他の文字と比べて、文字が上に寄って表示されている。取組一覧画面が分かりやすいが、枠の上にぴったりくっつきそう。【23日説明不足だったので追記】「一山本」では、下に続く「山」との間隔が狭くなっている。つまり、「一」は文字の縦方向=高さの専有面積が、他の文字より狭くなっている。(以上追記)
横書きの場合は、プロポーショナルフォントといって、文字によって各文字の横幅が異なっているフォントがある。その縦書き版みたないの、つまり各文字1文字当たりの縦方向の高さに違いがあって、この「一」はそれがとても短く設定されているのか? などと考えた。なお、モリサワのフォントでは「縦組みプロポーショナルメトリクス」というのがあって変えられるらしいが、素人にはよく分からない。
つまり、DF相撲体の「一」がそういう仕様になっていて、NHKはそのまま仕方なく表示しているのだと思っていた。
ところが、定時のNHKニュースの結果画面では、

大相撲中継と表示内容や基本デザインは共通だが、取組ごとのすき間を広げるなど細部は異なる画面。
しこ名はこちらもDF相撲体だが、「一」はパツパツでなく、他の文字と同じ高さを確保している。
さらによく見たら、中継ではひらがなの「の」が他の文字より右に表示されている。定時ニュースでは他の文字とそろった中央。
中継とニュースで、文字のレイアウト(微妙な表示位置)が異なるのは、どういうことか? どちらか(もしくは両方)が意図的に変更したのか、もしくはそれぞれが使うテロップやCGの作成ソフトの仕様や制約から違ってしまったのか。
DF相撲体のフォント自体がどうなっているか知りたいところだが、試し入力できる販売サイトは、いずれも横書きしか確認できないので、縦書き時の「一」の上下位置は不明。横書きでも分かるであろう「の」はきちんと中央になっていると思う。
中継の「一」は、パツパツできゅうつくそうで、アンバランスに感じた。定時ニュースのような他の文字と同じ高さにしたほうがいいと思っていたのだが…
本場所の会場には、その日の取組と勝敗を表示する「電光掲示板」がある。国技館以外での場所でも設置されるそうだ。
昔(少なくとも昭和)の大相撲中継では、CGの結果画面などないから、この電光掲示板をカメラで正面から画面いっぱいに撮影して、取組と結果を伝えていた。定時ニュースでも、NHKのニューススタジオに同様のものを作って映していた気がする(決まり手や勝敗数も表示?)【23日追記・バックライトの色が会場内とスタジオで違い、会場は今と同じように青白く、スタジオは電球色のような黄色っぽかったと思う】。CG画面のルーツは、この電光掲示板と言えよう。
その「一意」の「一」も、かなり上寄りに書かれている。DF相撲体の「一」はほぼ真横なのに対し、電光掲示板は右上がりのため、縦方向の専有面積はやや多いので、CG画面ほどの違和感はないと思う。

「一山本」も上寄り気味だが、違和感なし。
ということは、中継では、電光掲示板のスタイルに合わせようとして、「一」を上寄せしたのかも。しかし、DF相撲体の「一」は横一直線のため、(人によっては)アンバランスに見えてしまう、ということか。
ただ、「勢」「輝」のような1文字のしこ名は、電光掲示板では上寄せされるのに対し、テレビでは枠の中央に表示されるので、完全に電光掲示板と一致させているわけでもない。
ところで、電光掲示板の文字は、行司が手書きしている。
「相撲の魅力を伝えるウェブマガジン おすもうさん」のこのページで30代木村庄之助が「字数が少ない字は書きにくいので、とくに「一」は嫌でしたね。番付を書くときも、一はスペースのバランスもとりづらくて書きにくいんです。」と発言している。紙の番付の話だが、電光掲示板でも同じではなかろうか。
そして、それをデジタルフォントで再現しようとするのは、無理があるのでは。
中継ではこんな取組一覧画面も見られる。
幕下の取組一覧画面
しこ名を相撲文字で表示するのは、幕内と十両の力士のみ。幕下以下は、違う書体になる。
その「一翔(かずと)」の「一」は上に寄っていない。
取組編成の都合上、幕下の力士が十両へ出張して取り組みさせられることがあるそうで、その場合も、
その「栃武蔵」だけ違う書体
相撲文字になるのは力士を「関取」と呼ぶ範囲と合致している形になり、相撲界の厳しさが現れているのだという声もある。
幕下以下の書体は、上の画像の通り、現在は太めの明朝体。
モリサワの「黎ミン(れいみん)」のようだ。十両以上の画面でも、決まり手や「十両」「東」「西」部分に使用。
黎ミンを使うようになったのは最近のこと。2025年9月かららしい。
それ以前は、しこ名では、明朝体ながら横線も縦線も同じ太さで、どこかゴシック体の趣きも併せ持ったようなフォントだった。リコー「HG創英プレゼンス」ではないかと思う。
十両以上の決まり手は、楷書体(ダイナコムウェアのどれか?)で、さらに5年かそれ以上前にはモリサワ「楷書MCBK1」だった。
なお、定時ニュースの画面の決まり手は、現在もダイナコムウェア「DFP超極太楷書体」。
現在は、中継の「あすの取り組み」などでモリサワ「新ゴ」も使われている。NHKではニュースなどで、モリサワ製のユニバーサルデザインに配慮したフォントへの切り替えが行われたから、相撲中継でも可能な限りモリサワフォントに替えたのか。勝敗数の数字も、それっぽいフォントに替わっている。
モリサワでは相撲文字のフォントがないこともあって、しこ名までは切り替えできず、例外的にDF相撲体を継続使用しているのかもしれない。秋田放送局のような県域ローカル局でもDF相撲体を使用でき、夕方のニュースの郷土出身力士の成績(秋田局では幕下以下にも使用)などで見る。
パソコンで使える相撲文字のフォントは、DF相撲体のほかには、リコー「HG相撲文字」、システムグラフィ「GMA相撲文字H」、そして、羽後交通のバス停名表示に採用されている白舟書体が、2025年に「千秋相撲」をリリースした程度で、勘亭流など他の江戸文字と比べても選択肢は多くない。
モリサワさんだったら、日本相撲協会とコラボして、ユニバーサルデザインの相撲フォントなんか出しても良さそうでは。
最後に、一山本、一意、一翔と、行司さんは書きづらいみたいだが「一」を使うしこ名はそこそこありそう。
歴代力士を検索できる(検索対象は引退時点のしこ名のみ?)「大相撲.jp」サイトで調べてみたところ、63人いた。二や三よりは少ない。
現役では、幕下以下に「天一」と「若一輝」。2文字目以降に「一」がある。中継のDF相撲体でどう表示されるのか見てみたいから、がんばって昇進していただきたい。
ひときわ目を引いたのが、昭和30年代にいた、ズバリ「一(いち)」。
しかも秋田県出身(そのためか、どこかで聞いたような記憶がなくはないような)。
1940年生まれ、伊勢ヶ濱部屋。最高位 幕下五十二枚目。1959年1月に「男鹿山」で初土俵。秋田に男鹿山という山はないが、男鹿半島にある寒風山は、ドラマでも現実でもしこ名になった。
1963年3月に一になって、同年7月引退。本名が一ノ関姓の人なので、それも由来か。
【22日追記】「相撲レファレンス」サイトによれば、八郎潟町出身で、当初は荒磯部屋所属となっている。ただし、八郎潟町は1956年発足。
