2026年3月15日放送のフジテレビ系アニメ「ちびまる子ちゃん」、後半の「おむすびがおいしい理由」の巻について。脚本は、さくらももこと同級生の平岡秀章。
※西のほうでは、「おにぎり」より「おむすび」のほうが一般的だそう。
まる子の母・すみれが作ったおむすびを前に、まる子、友蔵じいさんの3人の会話のシーン。
外観で中身の具材が見分けられるかという話になり、すみれは見事に当ててみせる。そのセリフ。
僕は文字放送の字幕を表示させて、音声よりも文字に集中していた。録画しておらず、見逃し配信では字幕が出せないので、確証はないが、
「これがシーチキンかな」
と表示されたはず。
シーチキンは、言わずと知れた、はごろもフーズ株式会社(まる子の設定年代でははごろも缶詰株式会社。1987年フーズに改称)のツナ缶のブランド。作中当時の本社(※)は、清水駅すぐ裏にあり、まる子の家とは、東海道本線と巴川を渡って1キロほど。
※現在、本社は旧・静岡市、静岡駅近くへ移転。清水は「本店」として存続。
ちびまる子ちゃんもシーチキンも、清水が誇るキャラクターとブランドであり、両者につながりがありそうではある。実際、2007年4月から2011年7月にかけては、はごろもフーズがアニメのスポンサーで、まる子がシーチキンのCMキャラクターにも起用されていた。
その一方、現在のアニメ版ちびまる子ちゃんにおいて、「シーチキン」は「禁句」であるはずである。
なぜなら、現在のスポンサーの1社が、いなば食品株式会社であるから。静岡市清水区(清水市街地ではなく、隣の隣の町といった由比地区)に本社を置き、ツナ缶「いなばライトツナ」を製造販売する、はごろもフーズのライバル企業。
いつからスポンサーかは不明だが、昔は、ライトツナのCMが流れていた記憶がある(歌を覚えている)。現在は、まる子に限らず、同社のテレビCMはペットフードが中心なので、今回もそれが流れていた。
ツナ缶の国内シェアトップ(5割以上)であるライバルの商品名を放送してしまっていいの?
見逃し配信で音声をじっくり聞いてみると、実は「シーチキン」とは言っていない。
「これがチーチキンかな」だ。
すみれ役の一龍斎貞友さんは明確に「チー」と発音しており、言い間違いでもないと思う。
アニメちびまる子ちゃんの世界には、「チーチキン」という商品が存在する。
※すべての回を確認しているわけではないので、はごろもフーズがスポンサーだった時期などは、「シーチキン」の場合もあったかもしれない。
アニメ初回1990年1月7日放送の第1話「まるちゃんきょうだいげんかをする」の巻において、きょうだいげんかの原因が、母が「チーチキンを買ったらもらった」1冊のノートであった。
初期のアニメは、かなり原作に忠実だが、この箇所は原作マンガでは「シーチキン」になっている。アニメ化に際して、実在の商品名を避けたのだろう。
いっそ、一般名詞の「ツナ/ツナ缶」に言い換えてもいいかもしれないが、当時はそう呼ぶ人は少なかったのではないだろうか。商品名であるシーチキンがそれだけ認知されていた。
平成半ば、2000年前後になって、「ツナ」と呼ぶ人が増えてきたかと思う。シーチキン以外のツナ缶がいくらか増えてきたからか、「ツナマヨ」という略称が使いやすかったからか。
実在のブランドや商品の名を言い換える事例は、他のアニメやドラマでもある。配慮というより遊び心のほうが大きいかと思われるが、クレヨンしんちゃんでは、「サトーココノカドー」やドラッグストア「フエルシワ(ひどいネーミングだけど好き)」などが出てくる。初期には居酒屋「老衰の滝」もあった。
サトーココノカドーについては、イトーヨーカドーも認めるところとなって、期間限定で春日部店(2024年閉店)の看板がサトーココノカドーになった。
ただ、プレバトなど、最近は、競合かそれに近い関係の企業が、同じ番組に同時にスポンサーに付くことがなくはない。
いなば側でどうとらえるかは知る由もないが、ちびまる子ちゃんに「チーチキン」が出てくることは承知の上で、しかも、はごろもフーズが降りたより後にスポンサーになっているわけだから、それなりに寛容なのだろう。もちろん、今回の「チーチキン」に関しても。
だけど、「シーチキン」そのものが放送されるとなると、話が違ってくるかもしれない。
今回は、アニメ制作側では、「チーチキン」の共通認識があって作品を完成させたと思われる。それに字幕を入れるのは別部門だろうから、そこで行き違いというか、はっきり言って誤植が生じたことになる。
それにしても、字幕の内容は、生放送やフリートークは別として、台本がある番組では、その台本をコピー&ペーストして原稿を作成できそうなものだが、そうでもないのだろうか。
チーチキン以外に、ちびまる子ちゃんの少なくともアニメ版(いずれも原作は未確認)に出てくる商品名としては、「ハウスのたまごめん」が「ナイスのたまごめん」として登場。「ローラースルーゴーゴー(ホンダの商品名だそう)」や「追分羊かん(作者と製造元の交流があり、パッケージにも起用)」は、改変せずに出ていた。
以上、字幕について。要は、文字放送字幕作成時には、音声と一致した正確な表記を追求してほしいということです。スポンサー様というよりも、字幕を必要とする視聴者に、正しい情報を提供するために。
以下は、作品の中身について。
今回の話に出たおむすびの具は、鮭、梅干し、昆布、からあげ、タラコ、そしてチーチキン=ツナ(マヨネーズが入っているかは不明)。
ちびまる子ちゃんの世界は、1974年度の清水市である。
たまちゃんの母が作った、からあげも斬新だと思うが、ツナをおにぎりに入れるには、早すぎないだろうか。
秋田では1980年代時点では、シーチキンは普及していたが、サラダにするのがせいぜいで、ツナおにぎりは1990年代まで知らなかった。
また、コンビニエンスストアのおにぎりでは、1983年にセブン-イレブンが「シーチキンマヨネーズ」を発売したのが最初。
シーチキンは1958年に商標登録され、1967年からテレビCMを流していたそうなので、ツナ缶という食品の存在やシーチキンの名は、当時の清水では、地元企業の看板商品として充分に浸透していただろう。
本場だから、シーチキンのいろいろな使いかたを知る機会が多かったのかな。
もう1点。作中では、学校でおむすびはおいしいという話になり、はまじが「なんで給食っておむすびの日がないんだろ」「たまには給食に出てもいいと思うけどな」と発言するも、握るのが大変でしょと言われている。
当時は、工場で大量生産するおにぎりは、まだなかったのだろう。【17日追記・それ以前の話として、学校給食に米飯が制度上公式に採用されたのは1976年なので、1974年度では、ごはんが給食に出なかった地域もありそう。】
海苔を食べる時に巻くタイプのコンビニおにぎりもセブン-イレブンが最初だそうで、1978年発売。
1983年小学校入学の我々世代の秋田市の学校給食では、おにぎりが出た。
学校行事の都合などで、配膳・片付けの時間が確保しづらい(=早く食わせて、とっとと下校させたい)日などの「簡易給食」として、年に1回あるかどうかだったが。
給食に出る通常のごはんの炊飯をする、たけや製パン系列の秋田米飯給食事業協同組合が製造した、コンビニタイプのおにぎり(当時とは多少違いそうだが、今は一部コンビニ、スーパーで市販されている)。
具材は、鮭、たらこ、梅、おかか(=定番だと思うが、まる子作中には出なかった)といったところ。ツナは、中学校を卒業する平成初めまでの時点では、出なかったはず。