秋田港に寄港したクルーズ客船の乗客が下船して観光する際、現在は貸切バスやタクシーで輸送しているものを、既存の貨物鉄道を使って運ぶ計画があるという報道。「23日、分かった」としているが他社の報道はなさそうで、魁のスクープかな。
昨年記事にしたように、1986年夏の「秋田博'86」の輸送手段として同様の手法(区間は今回より長い)が取られたが、実現すれば31年ぶり2度目となる。この秋田博の時のことは魁でも触れている。
魁で触れておらず補足が必要なのは、乗り入れる貨物鉄道のこと。
昨年の記事の繰り返しになるが、地元の人の多くは、土崎駅から海側の貨物鉄道全部を指して「臨海鉄道」と呼ぶ人が圧倒的に多いが、正確には誤り。
正しくは、土崎駅-秋田港駅(貨物駅)は、「奥羽本線の(貨物専用)支線」でJR貨物の管轄。秋田港駅より外側が、本来の「秋田臨海鉄道」の路線。秋田港駅が両社の境界。
1986年は両社にまたがっての運行だったが、今回の計画は秋田港-土崎間のJR貨物区間だけということになり、臨海鉄道部分は対象外。魁で「貨物線はJR貨物が保有。」「1・8キロ」としているのは間違いではない。【25日補足】ただし、秋田港駅の業務はJR貨物部分も秋田臨海鉄道に委託しているそうで、その意味では臨海鉄道は無関係というわけでもないだろう。
それと、魁では「JR秋田支社」という表記が何度も出てくる。JRといっても、東日本、貨物、バス東北といろいろあるわけで、そこをはっきり書くべきだと、今回に限らずいつも思ってしまうけれど、これは「JR東日本秋田支社」と解釈するべきだろう。
JR貨物だと「東北支社/北東北支店/秋田営業所」なので。
唐突の話だったが、8月の運行というのも驚いた。
「早ければ秋田市の竿燈まつり(8月3~6日)での運行を目指し、調整を進めている」からあと2か月ちょっと。
記事によれば、「秋田港への仮乗降場設置」「車両数や運賃」「クルーズ船客以外の利用が可能かどうか」を検討し、国の認可、届け出等が必要になる。
記事最後ではJR秋田支社が「運行案があることを認めた上で、「現段階では何も決まっていない」」と言っているけど、大丈夫?
一方で「国土交通省は「(略)安全性が確認できれば、8月中の運行は可能」との見方を示している」そうで、認可する国交省がそう言うのなら大丈夫なんでしょう。
この計画は、「JR秋田支社と県が」検討しているが、乗降場の設備などは「JR側が中心となって整備」し、「県は観光PRに注力する」という。
現状では「一度に数千人という規模に対応し切れておらず、秋田市中心部や同市土崎港周辺への誘客も課題になっていた。」「観光地への2次アクセスを増強するとともに、秋田市内への誘客効果を高める狙いがある。」。
客船入港時は、港にバスが何十台も並ぶし、竿燈まつりの時はそれがピストン輸送する。以前は竿燈期間中だけだったけれど、昨年辺りから、春から秋にかけて国内外の船が何度も入港している。
それを思えば、鉄道のほうが効率的かもしれない。
でも、バスは港の船のすぐ前まで乗り入れられるが、秋田港駅へは交通量の多い道路を横断して歩かないといけない。(厳密な意味での)臨海鉄道部分に乗り入れて乗降場を設置すれば、徒歩移動は短縮されそうだけど、それは課題はさらに多いだろう。
仮乗降場で待ち時間が生じることも考えられるが、屋根・ベンチやトイレなどはどうするのか。
冬は客船は来ていないようだけど、真夏の炎天下の港を歩かされるのはつらいかもしれない。
それに、百人千人単位での輸送となると、いくら鉄道でも一度には運べなかったり、立った状態で乗車したりすることになるだろう。
1986年の運行時には、貨物線内では低速で走行し、土崎駅から奥羽本線(の本線)へ出入りする時は、線路配置上、入れ替え作業が必要で、時間がかかった。土崎駅で乗降を扱わなければある程度は短縮されるが、基本的には今も変わっていないはず。秋田港から秋田駅までだとしても、時間的にはバスと比べてどうだろう。
このような点は、豪華客船のお客には、どう感じられるだろうか。
この計画は「秋田市内への誘客」も狙っている。
客船が入った日は、千秋公園や秋田駅周辺など、それらしき人が歩いているのを見かける。ご満足いただけているのかどうか、心苦しいけど…
いくら列車を使ってアクセスがよくなっても、魅力的な訪問場所を作らないと、意味がないと思う。
それに「土崎港周辺への誘客も課題」とあるが、それは鉄道とは関係ないのでは?
土崎の観光地といえば、ポートタワー・セリオン周辺、つまり港のすぐ近く。そもそも、1986年のように土崎駅で乗降を扱うには入れ替え作業が必要になるし。
秋田市の観光地整備は、本来は秋田市の役目。鉄道運行計画に秋田市も巻きこむとか、連携を密にしないと、ちぐはぐな結果にならないだろうか。
現在、秋田港で下船してバスなどで秋田県内を観光する人たちは、角館や男鹿半島へ行く人が多いようだ。
全国的、世界的にも有名な観光地だから、仮に秋田市内が魅力的な観光地になったとしても、旅行客の心理としてはやっぱり角館・男鹿へと思う人も多いはず。
あるいは、かつての「爆買い」は下火になったとはいえ、今も海外から買い物ツアーが来ている。最近、イオン秋田中央店にバスが5台も来ていたことがあった。
そういう人たちは、鉄道に乗ったとしても結局どこかで乗り換えないといけない。だったら、港からバスで直行のほうがいいと思われてしまうかもしれない。
ほかにも、入出港時間はまちまちだから、それに合わせて柔軟なダイヤが編成できるのかも課題。
鉄道趣味的には、普通は「旅客鉄道会社が保有する線路を、JR貨物が借りて運行している」のに、主客転倒した形になるのがおもしろい。あと、どういう車両が運行されるか。乗客数と車両配置数からすれば、男鹿線用のキハ40系気動車しかないだろう。貨物支線への入線実績はないと思われるが、支障はたぶんなさそう。
この路線では、国交省主導で貨物の「シーアンドレール構想」が数年前に試行されたものの、結局は立ち消えたのだろうか。
乗客輸送がどういう結果になるのかは分からないけれど、鉄道の新たな活用としては期待したい。
前も述べたように、定期フェリーやセリオンの客、沿線の買い物や通勤通学輸送、臨海鉄道へ乗り入れて向浜でのプロ野球などスポーツイベントの輸送にも使えると思う。
1年前の1986年を振り返る記事では、「(1986年のような貨物線での旅客輸送を)今やろうとすれば、人員が減ったり、費用がなかったりして、難しいのかもしれない。」としていた。まさかその1年後に実現するかもしれないとは!
【7月1日追記】2017年8月3~6日の竿燈まつり期間中に、試験運行として実現することになった。※今回の試験運行は「トライアル運行」と称するのが公式らしい。
6月29日にJR東日本が国土交通省東北運輸局へ許可申請を行い、30日に県・秋田市・JR東日本秋田支社が記者発表を行なった。秋田魁新報と秋田の全テレビ局が報道した。以下、出典を示していない項目は、複数のマスコミが報道。
・乗船客のみで、一般の利用は不可。(魁より)
・船の入出港に合わせて、1日当たり1~2往復運行。4日間で計5往復。
・秋田港-秋田の所要時間は片道約15分。
・運賃は片道200円を想定。(魁より)→個別に徴収するんだろうか? ツアー料金に込みで、あくまで申請上の運賃設定なのかも。
・今年の試験運行を受け、来年以降の本格運行について検討する。
・車両について↓
車両は、魁が「4両編成の気動車(定員約240人)」を使うと伝えている。
秋田朝日放送では、記者会見での秋田支社長の質疑応答がそのまま放映され、「通常の気動車です。」と話している。その部分には「普通の機動車(五能線の普通列車)」との字幕が出ている(“機”動車は間違いですよ)。
秋田朝日放送ホームページより。“機”動車は気動車ですよ4両で240人というのは、ボックスシート(セミクロスシートか)のキハ40系4両の座席数(着席定員)とほぼ一致する。支社長のコメントからしても、間違いないだろう。
ただ、なんでAABの字幕は「五能線の普通列車」としてしまっているのか。「男鹿線の普通列車」も帯の色が違うだけで同じなんだから、そっちを使う可能性もあるのでは?
下船客全員を列車に乗せるわけではないようだ。
報道によれば、秋田駅まで運んで、そこからJR他路線に乗り換えて県内各地へ行ってもらうことも狙っている。上記、AABで流れた支社長のコメントは、「通常の気動車です。ただ商品の中には、秋田駅まで来ていただいて、それから乗り継ぎとしてクルージングトレインを4日間のうち1日出そうかなというふうに思っています。そういう商品も提供していきたい」と続いた。
※クルージングトレインというのは、あのクルージングトレイン(元青池編成)のことなんでしょうか?
ただ、それだと、秋田市内への誘客うんぬんとして秋田市が関わってくる意味は、やっぱり薄いような…
本件は、県内主要マスコミがすべて報道したわけだが、魁は運賃など細部を詳しく伝え、秋田朝日放送は支社長のインタビューを伝える(字幕は間違ったけど)など、個性が出ていた。
さらに秋田テレビと秋田朝日放送では、1986年の秋田博での運行にも触れ、秋田テレビは当時の映像も流してくれた。秋田朝日放送は開局前だから映像がないのはやむを得ない。記念きっぷの映像で対応。
それらに引き換え、秋田放送とNHK秋田放送局は表面的というか個性がない通り一遍の報道に感じられた。
NHKでは、現在の貨物列車が走っている映像を資料として流したはいいけれど、今回の運行区間ではない、秋田臨港鉄道区間の映像も混ざってしまっていた。
【7月2日追記】7月2日付朝日新聞秋田版によれば、2往復運行されるのは6日で、3~5日は1往復。
秋田港の入港予定によれば、各日とも入港する船は1隻ずつ。6日は「ダイヤモンド・プリンセス」。
【7月4日追記】7月4日アップの河北新報サイトによれば「埠頭と秋田港駅間は途中で県道を横断することからバスで結ぶ。」そうだ。悪天候や安全を考えれば妥当だし、近距離だからピストン輸送で対応できるのだろうけれど、かえって手間な感じもする。
【7月25日追記】7月22日付秋田魁新報より。
使用車両は「男鹿線で運行している4両編成の気動車」とあり、JR東日本秋田支社のホームページにも同じ内容がアップされた。
「14日には秋田港駅に、延長約12メートル、幅約3メートル、高さ1.2メートルのスロープ型の仮設乗降場も2カ所設置した。」として、セリオンから撮影したと思われる写真も掲載。キハ40系
運行時にはJR東日本が「乗車証明証の発行や踏切の警備業務、通訳などに約100人を配置する」。
また、国の補助事業に採択されて、本格的なプラットホームを整備できることになり、来年度以降も運行される見通しになった。今夏のトライアル運行も終わらないうちに、ずいぶん話が進むもんだ。
【7月25日さらに追記】報道されていないがネット上の情報によれば、7月16日には、男鹿線用キハ40系を使って、秋田港までの試運転が実施されていた。
【8月5日追記】8月3日の運行開始の模様が各マスコミから報道された。4両とも男鹿線色で、車内が映ったものはボックスシート(=オールロングシート化されていない)だったが、他の車は不明。車体側面の行き先表示板(サボ)は「秋田港クルーズ号」。
利用者は70人ほど。途中の沿線(秋田市北部市民サービスセンター前?)では手を振って歓迎されたり、秋田駅にナマハゲが出たりして、乗客には好評だった模様。
【12月31日追記】12月31日付秋田魁新報社会面によれば、少なくとも運行初日は、貨物線区間も秋田運輸区の運転士が運転した。
【2018年1月31日追記】
2018年4月から、常設のホームが造られ、国の認可(JR東日本が第二種鉄道事業者として=線路保有はJR貨物のまま)を受け、本格的に運行されることになった。
2018年は4月から11月まで14日の運転で、入港に合わせて12日(年間の入港予定は24日)運行。ほかに7月下旬の「秋田港海の祭典」開催時の2日も運行。
河北新報によれば、その海の祭典時は「一般客が利用できる列車」だそう。
※2024年の運行風景。