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行先表示社会実験

路線バスの車体に付いている、「行き先表示(業界では“方向幕”などと呼ぶ)」のお話。
現在、日本の路線バスでは、車両の前・後・側面にその経由地や行き先を表示するのが一般的。でも、よそから来た人など乗り慣れない人には分かりにくいことが多い。

秋田市のような、ある程度の規模以上の都市ではバス路線網が複雑だから、スペースが限られた中にいろんな情報を示さなければならない行き先表示が分かりにくくなるのは仕方ないことで、どの街でも似たような状況だと思うが、今の秋田市では、それが顕著だと思う。それには次のような理由があると思う。
 1.従来の幕式(印刷したフイルムを回転させて表示する)からLED式への移行途中であるため、新旧の書式が混在している。
  導入費用の面から一斉に全交換は無理だし、LEDでは色や文字数・レイアウトの制約があるため、新旧を同一の表示にすることはできないから仕方ない。
 同じ路線だが、レイアウトは違う
  なお、一度導入してしまえば、ランニングコストはLEDの方が安い。
 2.幕式表示時代の表示内容の矛盾点や、旧秋田市営バスの表示を、そのままLED化してしまったため、整合性・統一性に欠ける。
  従来から統一性に欠けていた表示を、何も考えずにそのままLED化しただけの路線が多く、分かりづらい。
  さらに、旧秋田市交通局から引き継いだ路線もそのままLED化したものが多く、「1つのバス会社に2つのバス会社分の行き先表示が混在している」ような状態になっている。
  そのため、同じ場所を指しているのに表記が異なったり(「秋田駅」と「秋田駅前」、「八橋球場」と「八橋」)、逆に違う場所なのに同じ場所と誤解しそうな表記(「車庫」と「臨海営業所」など)がある。
 「八橋球場」と「八橋」は同じ意味だが、別路線に「八橋」という停留所もある
  秋田市交通局廃止による路線移管と、同時期のLED方式の普及が、表示内容見直しのチャンスだったのに、時機を逸してしまった感がある。
 3.近年は郊外路線の再編や総合病院の郊外移転に伴う、既存路線の経路変更・延長が多く、乗り慣れない人にはさらに分かりづらくなった。
といった事情があると思う。

秋田の場合、案内所や運転士に尋ねれば、親切に教えてはくれる。
でもやっぱり、見れば分かるのがいちばんだと思うし、普段バスに乗らない市民の中には「表示が分かりにくくてバスには乗りづらい」と考える人もいるだろう。
全国的に、各バス会社や行政が行き先表示の改善に取り組んでいるようだが、業界団体がノウハウのある会社とない会社の仲立ちをするなどもできないだろうか。「NBA」シールを貼るだけが、業界団体の仕事ではないと思うけど…


前置きが長くなりました。これから本題です。
今日から、秋田市内の一部バス路線の行き先表示に変化があった。
こんな感じ。右に「38」と番号が付いている
これは秋田市役所が行う「行き先表示の社会実験」で、「バス利用者の利便性向上とバス利用の促進を図ることを目的に、路線バスに表示する終点や経由地などの情報の表示方法についての社会実験を行います。」とのこと。(詳細は「秋田市交通政策室」で検索)
5月1日から31日までの間、秋田駅東口発着の6路線の行き先表示を一時的に変え、利用者にアンケート(調査票配布並びにWeb上)をするそうだ。
たしか、民間のコンサルタント会社(?)みたいな所に委託して行い、けっこうな費用がかかっていたはず。
市のサイト上やバス停には案内が
対象路線では、行き先表示(前・後・側面)を見直し、路線・系統番号を振るということのようだ。
路線名と番号の一覧。アルファベットは使わず数字だけ
【3日追記】番号は同一路線では上り下りとも同じ番号が振られる。同一路線内で経由地が異なるものには、枝番をつけるらしい。
実は、バス路線の番号づけは、昨年初当選した、現秋田市長の公約の1つになっていた。また、それ以前(前市長時代)に作られた「公共交通政策ビジョン」に盛り込まれてもおり、秋田市としては推進したい事業だったのだろう。
バス会社としては、路線や車両で協力しているだけで、主体的ではないようだ。(サイトや車内に告知はない)
高知県の交差点にアルファベットを表示する事業を以前紹介したが、個人的にはそれと同様、番号ってそれほど重要なことのかなと思う。外国人や子どもが分かりやすいということはあるが、ただ番号をつけておしまいではいけないと思う。
むしろ、文字による経由地の表示を充実させた方が、「秋田市の地理を把握してはいるが、バスに乗り慣れずに路線を把握していない人」でも経路を把握しやすく、バス利用の掘り起こしにつながると思う。番号は上の写真のような対応表がなければ意味がないし、番号を間違って記憶してしまったらおしまいだから。
つまり、例えば 「99 新国道 組合病院」 などよりは 「99 新国道・土崎・飯田街道高専 組合病院」 などと、番号と文字情報充実の両方をするべきだと思う。

さて、社会実験ではどんな風に表示が変わったのだろうか。3路線を見てみた。
○桜ガ丘線 秋田駅東口→明田郵便局→横森→桜→桜ガ丘→大平台三丁目
西口発着の路線もあるが、実験対象は東口発着のみ。
 市営バス時代と実験前の表示
市営バス時代の「桜 ガ 丘」という、余白の多い表示が、移管後もそのままLED化されていた。
元をただせば、当初は桜ガ丘が終点だったが、宅地開発に伴い1998年11月に大平台まで延長されたようだ。つまり、1998年以前の表示をそのまま使っていたことになる。
それが社会実験中は…
前面。同じ路線とは思えない
明田・横森橋・桜ガ丘 マ 大平台三丁目 13-2

今回の実験のルールでは、上段の小さな文字が「経由地」、下の大きな文字が「行き先(終点)」を示すことになっている。
したがって、いくら路線名が「桜ガ丘」線で、利用者が「桜 ガ 丘」の表示に馴染んでいたとしても、経由地に過ぎない「桜ガ丘」は小文字になってしまい。終点の「大平台三丁目」が大書きされることになってしまう。
「横森」などの経由地が分かるようになったのは親切で大きな進歩だが、「桜ガ丘」が目立たず、乗り慣れているけど実験を知らない人が、この表示のバスを見たら、面食らうだろうな。

「13-2」というのが桜ガ丘線に割り当てられた番号だが、一覧表を見ても「13-1」や「13-3」以降がない。何なんだ? 将来の本格運用を見据えて、西口発着路線などに対して、もう割り振りしてあるのだろうか? 他にも「12」が欠番で、「14」の次は「27」「33」「38」と飛び飛びになっている。
そして反転表示の「」。これは、「マイタウン・バスとの乗り継ぎ路線を示す」のだそうだ。
つまり、既存路線の廃止に伴い、今春から運行されている「マイ・タウンバス東部線」との接続点(実験範囲では大平台三丁目と日赤病院)に向かう路線に表示される模様。あんまり表示する意味が分からない…

ところで、今回の実験路線を走る車両は、LED式の表示のものが多い。もしかしたら車両をやり繰りして対応しているのかもしれない。
ただし、一部では従来の幕式の車両もあった。
内容は同一で、番号や「マ」がカラーになっている
LEDの表示を変える場合、パソコンでデータを入力し、SDカードか何かのメモリーに保存して車両にセットするだけでよく、手間は少しかかるが追加費用はかからない。だが、幕式の場合、業者に頼んで印刷して車両にセットしなければならず、手間も多いしその都度費用もかかる(←これがLED化が進んでいる理由)。実際いくらかかるのかは知らないが、贅沢な社会実験だ。
後部は「13-2 大平台三丁目」(LEDも同じ)
これじゃ桜ガ丘線とはすぐには連想できない。

○広面・御所野線 秋田駅東口→日赤病院→御所野・中央シルバーエリア
秋田市の郊外発展の象徴・御所野(ごしょの)地区へ行く路線。西口から牛島・御野場(おのば)経由で御所野へ行く路線もあるが、本数・料金的には東口発が有利。
 従来
従来は「御所野」が目立ち、ある意味分かりやすかった。

実験中は、
 
前は「日赤病院・御所野 中央シルバーエリア」、後ろは「中央シルバーエリア」だけ
番号の「11-2」と「11-3」は御所野学院など、経由地が異なる路線に振られている。
桜ガ丘と同じく「御所野」が目立たない。「シルバーエリア」という文字を見て、御所野を連想できる人がどれだけいるだろうか。
側面にも「御所野」がない
秋田駅東口」なんて始発地なのだから書かなくていんじゃない? その分「御所野」を入れたら?
それと最上段横書きの、従来は「○○経由」などと書かれている部分に「11-1  マ」としか表示しないのはもったいない。もっと他の情報を入れてはどうだろう。(文字のスクロール表示ができたはず。他社で見たことがある)

赤沼 秋田営業所(大川反車庫)→県庁または長崎屋バスターミナル→秋田駅西口→手形山崎→大学病院→南団地→秋田駅東口
通しで乗る人は絶対にいない路線。秋田駅を2度(西口と東口)通るのだから。バス会社にしてみれば、駅と大学病院間を効率よく循環運行するのには適しているのだろう。
実験対象路線では唯一、秋田駅西口にも乗り入れる路線。
 従来は「南団地・駅東口」がメイン
秋田駅西口へ行く人が大部分の県庁付近などで、「東口」の文字を見ると、どういう経路を通るのか戸惑ってしまう人もいるだろう。西口経由東口行きだとは思わないから。
これを実験ではどう表示しているだろう?
 
県庁市役所・秋田駅・大学病院 秋田駅東口」あまり変わってない。かえって「東口」が大きくて目立ってる。
側面。これは西口と東口が分かりやすいかな
っていうか、3か所とも「南団地」が消えている!
南団地付近の利用者がどのくらいいるのか知らないが、「南団地」の表示があることで赤沼線だと認識していた利用者もいたはず。完全に抹消してよかったのだろうか。
また、この表示では、西口発の手形山団地線、大学病院行きと混同される恐れもないとは言えない(=手形山団地線ではないという根拠がない)。どちらも西口→大学病院なのだから。

なお、案内によれば、反対方向は普段の「大学病院・秋田駅 県庁・八橋・車庫」が実験中は「大学病院・秋田駅・県庁市役所 大川反車庫」になっている。
紛らわしい「車庫」の表示は「大川反車庫」になったが、「八橋(球場)」が消えてしまった。また、「県庁」や「長崎屋」が経由地であるため小文字になり、どっち経由か見づらくなった(=県庁市役所・文化会館・八橋運動公園などへ行く人には分かりづらい)。


全体を通しての個人的見解(←偉そうですが)
・全体的には従来より分かりやすくなった。こんな調子で市全域の全路線の表示を再編すれば、分かりやすくなりそう。
・今回は1か月の実験とはいえ、充分に周知があったのだろうか。説明書きもやや難解。連休明けあたりに乗り損ねたり、間違う人がいないか心配。
・大書き=終点名には反対
 このルールを適用すれば、例えば西口発着の「新屋線」「新屋西線」ともに「新屋」と大きく表示されることになり、混乱しそう。
 【2日訂正】終点停留所名だから新屋方面の場合、「西部市民サービスセンター」と表示され、「新屋」や「新屋西」はまったく表示されない恐れがある。そういうバス停はないから。あと、「秋田温泉線」と「添川線」も経路はまったく違うが終点が同じなので「蓬田上丁」になってしまう。
 「桜ガ丘」「御所野」「南団地」「県庁or長崎屋」など、利用者が馴染んでいる路線名や路線識別上必要な主要地名があるものは、それを大きく表示するべきではないか。後部の表示も含めて。
 とっさに路線番号を見せられても分からないし、「“行き先”表示」と言っても“経由地表示”も重要だと思う。
・今回は比較的単純な“1本道”に近い東口路線だったが、西口側の複雑な路線網でこれをやるとすれば、たいへんな作業や周知が必要になりそう。万人が納得するのは難しいが、この実験を踏まえて充分に検討してほしい。
【5日追記】思い出したが、車内放送と連動して、LED表示の内容を変えられるシステムもある。秋田のバス会社の機器が対応しているのか知らないし、データ作成が面倒そうだが、駅を2度通る赤沼線などでは、側面の4行では足りなくて分かりづらいから、検討してもいいかもしれない。
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※この実験を踏まえて、このようなになりました。