北海道旅行の最後にハプニングがありました。
帰りの札幌からの特急「スーパー北斗」は時間通りに函館に到着。千歳空港の積雪の影響なのか、途中の南千歳駅から多数の乗客が乗って、自由席は混雑したようだ。
函館で「スーパー白鳥44号」に乗り継ぐ。車内は横1列に1人程度の乗車率でゆったり。「スーパー白鳥」はディーゼルカー(気動車)中心のJR北海道の数少ない“電車(モーターで自走する列車という意味)”。デンマーク国鉄と提携して共同設計したそうで、どことなく品があっていい。北海道のイメージにも合っていると思う。

天井がブルーで珍しいが、落ち着いていていい。緑の中に青い座席がランダムに並ぶのも斬新。緑でなく赤の車両もある。海の向こうに函館山や市街の明かりが見渡せてきれいな車窓を眺め、青函トンネルの中は快調に140km/hで走行。“スーパー”でない「白鳥」はJR東日本保有の国鉄時代からの電車をリニューアルした車両(色違いが「いなほ」で使われる)で、こちらもトンネル内は140km/h走行しているが、ガタガタという振動と騒音がひどく、「かなりがんばってます」という感じ。でもスーパー白鳥では余裕がある走りで、新幹線に似た乗り心地がすると思う。他のJR各社の車両と比べても滑らかで静かな乗り心地がして好きな車両だ。
車内の案内どおり、21:42頃青函トンネルを抜けた。
座席前にトンネルの通過予定時刻や説明が貼ってある。このあと21:56蟹田、22:20に終点青森に停車することになっている(白鳥は通常は八戸まで行くが、最終の44号だけは青森止まり)。僕は青森で3分の接続の特急に乗り継ぎ、22:55に弘前に着く予定だった。
青函トンネルの本州側には、短いトンネルが数本続く。それを抜けた所の「津軽今別」という駅で停車。「強風が収まるまでしばらく停車する」と放送がある。荒れる天気予報だったが、やはり・・・
外は暗くてよく見えないが、ホームにうっすら雪が積もり、柵の向こうの枯れ草が風で大きく揺れている。

そして車両がふわふわと揺れる。バスで乗客が大量に乗り降りした時のような揺れ方だけど、電車が風によって揺れていると思うと怖い。この状況を実感すれば、どんな説明をされるより一目瞭然。運転見合わせは当然だと思うが、真っ暗な何もなさそうな駅、もしここで停電や寒さで車両の電気系統が故障でもしたら、真っ暗で暖房も止まる。そう思うと心配だし、長期戦になるだろうと思いはじめる。
2時間ほど「発車のめどがたたない」という放送が何度か繰り返され、23時頃「風速が40メートルを越えていて、青森近辺でも多数の列車が足止めされている」とのこと。
この列車は青森止まりで新幹線に接続しない。しかも金曜の夜で、急ぎの客は少なそうで、地元青森の人が多そうな雰囲気。冬の風の怖さは知っている人が多いだろうし、1人で乗っている人が多く、皆、黙って待っていて静かな車内。車両の機密性が高いからだと思うが、風の音は聞こえない。携帯電話は通じるようだが、僕の乗った車両に設置されていた公衆電話で連絡を取る人が多い。僕も弘前のホテルへいつ着くか分からないが、宿泊はするつもりであることを電話する。何度か泊まった使い慣れたホテルを予約していたので、少しでもベッドで寝たいから。
23:40「代行バスが青森を出てこちらに向かっているが、到着までもう1時間ほどかかる」と放送。どうやら初めてのバス代行体験になりそうだ。ついに日付が変わる。
0:40「バスは蟹田まで来ているが、悪天候で時間がかかっている。さらに30分ほどかかる」と放送。青森・蟹田と津軽今別の距離感覚がいまいちつかめないので、ともかく待つ。まだ風は強い。
1:10「さらに30分かかる。代行バスに乗らずに、列車内に残ってもいいが、運転再開の見込みはまったくない」と放送。
1:25「まもなくバスが到着。ホームに雪があって暗いため、最後尾のドアの1か所から降りてもらう。弘前までは青森から別の代行バスを準備している」と放送。青森で足止めされるかもと思っていたが、弘前まで足を確保してくれたのは意外。
まもなく降車開始。4人の職員が(青森から?)来て、危険なので20人ごとに区切って案内をするという。
1:45僕は第3陣として降車。車内に残る覚悟を決めた人も各車両数人ずついた。
停電しているらしく駅の照明は消えていて、外は本当に真っ暗。吹雪というか雪交じりの強風が吹きつけて、確かに危険。階段などに発電機と照明が仮設されていたのは安心。
普段は寝台や貨物列車が行き交う海峡線の線路にも線路がちょうど隠れるくらいの雪が積もっていた。線路を横断すると長い下り階段があり、下に別の線路と「津軽二股」という駅があった。
ここで説明すると、津軽今別は本州にある唯一のJR北海道管轄の海峡線の駅。現在は上り下り1日2本しか停まらないが、駅のすぐ下のJR東日本管轄の津軽線の津軽二股駅には、5本が停まる。つまり、トンネル開業前からあった津軽線と海峡線(青函トンネル)が分岐してすぐのまだ並走している地点に隣接して駅があるのだ。「道の駅いまべつ」とも隣接。なお津軽線の「今別」駅とは離れている。
100メートル以上は歩いただろうか、秋北バスなどと同じ国際興業系列の塗装の十和田観光電鉄の大型貸切バスが待っていた。本社は南部地域の十和田市だが青森市の営業所の車だろう。
近くにタクシーも1台止まっていたが、誘導に当たった4人の職員が乗ってきたようだ。
荷物はトランクに預け、補助椅子に座る。定員になったが、添乗するJR職員が来ないとか言っていたが、そのまま(バス運転士のみで)1:58発車。「バスは1台だけ」というような話が聞こえたし、実際他のバスを見かけなかった。乗り損ねた人は、列車で待たざるを得なかったのだろうか。
バスの窓からは、ヘッドライトに照らされて渦を巻く雪しか見えない。バスのワイパーが動かないのに吹き付けた雪が消えていくのだけど、熱線でも入っているのだろうか。
地理感覚がなく、どんな場所なのかも分からないが、窮屈だし、列車で待っているより辛いかもしれない。ガムか飲み物をカバンから出しておけばよかったか。1時間ほど寝た。
速度は30km/hくらいで、ゆっくりと進む(進めない)。たまにすれ違うのは作業中の除雪車だけ。後で調べたらおそらく海沿いの国道280号線を走ったのだと思う。
やがて信号機が出現。コンビニなどの明かりが増えてきて青森市が近いことを実感する。3:47青森駅正面に到着。
駅の入口に数人の青森駅社員がいて「今、払戻はできないが、証明がなくても後日どこの駅でも特急券の払戻ができる」という案内をする。僕はフリーきっぷなので、払戻対象外だから関係ない。気になるのは弘前までの代行。
弘前まで行く人は10人以上いたが、駅員は「弘前への代行はない」と説明。車掌の放送と食い違っている。車掌が独断でそのような案内をすることはないから、青森の輸送指令と青森駅など現場との間の行き違いかと思われる。考えてみれば青森までは盛岡支社、弘前方面は今回の運休と直接は無関係の秋田支社管轄だから、そんなに簡単に代行の手配が決まるのも怪しい。青森までしか代行がないのであれば、列車に残った人もいただろうからこの対応では困る。でも僕は夜明け近いし、こうなったらどうでもいいやと青森で夜明かしする腹を決めかけた。
ところが弘前まで行く乗客が口々に「車掌が放送で案内した」と言うと、駅員がどこかへ引っ込みすぐ戻り「そのようにご案内した以上、弘前までタクシーでお送りします」とあっさりと決定。乗車券の回収をするでもなく「皆さん弘前までの乗車券はお持ちですね」と確認しただけ。すぐ近くのタクシー乗り場に客待ちのタクシーが数台いたので、男女別に各社4人ずつ乗り3:55出発。
僕は助手席だったのだが、これも怖かった。青森市のタクシーだからドライバーは雪道運転のプロ。スリップなどもせず、運転操作は無問題。怖かったのは引き続きの猛吹雪。国道7号線は、さっきより照明が多いが、それでも何度か目の前が真っ白になる。前方を数台の車が走っていたので、そのテールランプが頼りになっただろうが、もし先頭だったら、もっと怖かっただろう。
路上の電光掲示には「暴風雪警報発令中」と表示されている。除雪がまだで、路肩が吹きだまって実質1車線の区間もある。ひっくり返っていた車もあった。こんな車がタクシーに突っ込んできたら・・・
弘前市にやっと入る。道案内の標識に雪が付いて見えず、「弘前市内の道に詳しくなくて・・・」という運転手さんに、僕が知ったかぶりでナビをして、見覚えのある代官町のみちのく銀行弘前営業部が見えたときは本当にほっとした。5:00弘前駅前に到着。深夜2割増の運賃はたしか13150円だった。
列車停止から約7時間。のどが渇いたようなカゼを引いたような気分で体調が良くない。そして眠い。予約した弘前国際ホテルは土手町だから歩くと10分以上かかるが歩く気がせず、珍しく自腹でタクシーで。朝食がとてもおいしいホテルでそれが楽しみだったのが、とにかく11時のチェックアウトまで寝ていたくて、キャンセルする。水を1杯飲んで風呂にも入らずバタンキュー。このホテルは枕もマットレスも低反発のテンピュールを使っているのも売り。そのおかげか、3時間半しか寝られなかったが、目覚めると体調は回復。朝食を食べても良かったかも。
必要に迫られた旅行でなく、道楽旅行の帰りだったから言えるのかもしれないが、いい経験だった。
まず北国の冬の自然の怖さを改めて実感。
あとはJRの非常時における(特に現場の)連携、対応の良さ。バスに乗り損ねた人たちのことは気がかりだけど。まず、津軽今別はJR北海道と東日本の境目であり、列車はJR北海道所属の車掌が1人乗務。連携がうまくいかない可能性もありうる状況だったが、そうではなかった。車掌は的確に状況を案内し、バス到着後は列車とバスの間を何度も往復し、乗客を気遣ってくれた。その後、運転士と共に列車と残った乗客を青森まで送り届けたのだろう。弘前への代行の行き違いがあったことはともかく、タクシーの手配を迅速に決定した青森駅の対応もよかった。
弘前に行くのではないようだったが、青森県人と思われる1人のジイさんが食って掛かって、駅員2人掛かりで対応していたが、それは筋違いだし、地元の人ならこの天気の怖さを知っていて文句など言えないはず。
乗客の人数の少なさと理解もあったが、JR側の対応で不満に感じることは僕としてはなかった。落ち度がない自然の気象が原因なのに、バス・タクシー代を支出し、規則とはいえ払戻しをしてJRさんも大変だ。
忘れてはいけないのは、十和田観光電鉄バスとタクシーのドライバー。どちらも突発的な注文に応じ、安全運転をしてくれた。タクシーの方は、あの後無事に青森市まで戻れたか、心配だ。
実は、僕は以前もスーパー白鳥が遅れ、特急料金払戻しの経験がある。しかも今回取った指定席は、スーパー白鳥「44号」の「4」号車「4」D席でなんか不吉。
好きな列車なんだけど、相性が悪いのかな・・・翌日(というか既に当日)も一部で遅れたり、津軽海峡線は送電障害で運休しているらしい。奥羽本線の秋田行きの普通列車は折り返し列車の遅れなどで30分程度の遅れ。「こまち」に接続しなくなったようだが、さっきまでのあの体験に比べれば、僕としては何ともない。陽が差したりして天気も良くなってきた。
弘前と秋田駅でホーム変更などがあったが、その手続きなどでも年配の車掌、若い運転士が規則に則って、安全な運行をしていることが分かる行動をしていた。
普通列車の運転席途中駅停車中に秋田駅到着ホームが変更になる無線が入った。運行に関わる重要な指示は、「運転通告券」という紙に記入する決まりになっている。運転士右側の縦長のものは時刻表でその左下にクリップ止めしている横長の紙がそれ。こうした決まりが安全運行を支えている。
ちなみに津軽今別駅は北海道新幹線開業後は「奥津軽(仮称)」駅になる計画だそうだ。バスに乗った場所が道の駅だったのだろうか。いろいろ気になるので、暖かくなったら訪ねてみようかな。