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補助信号の俳句

俳句と信号機の話。
まず俳句。まったくの素人だけど、鶏頭(ケイトウ)十四五本【2020年10月14日】や席書大会【2024年10月8日】で取り上げ、TBS系「プレバト!!」の夏井先生のコーナーも見ている。【23日追記・2014年7月12日には、「閑さや岩にしみ入蝉の声」のセミの種類に触れていた。】
季語と五七五の制約の中で、見たものを素直に表現すればいいのかと思っていたが、そうでもないようで、技巧に走りすぎているように思えてしまうこともある。

難しそうなのは、句の中に、業界用語・専門用語や新語など、辞書に載っておらず、誰もが知っているわけではない言葉を読みこみたい時。
あきらめて使わないのが無難だと思うし、夏井先生もそう添削することもあるが、たまに「そのまま残しましょう」としたこともあった(どんな言葉かは忘れた)。意味自体は分からなくても、全体の雰囲気で伝えるということなのか。

2024年頃に秋田県内で開催された俳句の大会(短歌だったかも?)で、(大人も含めた全作品の中で)上位に選ばれた高校生の作品に、「バッシュ」という語があった。
僕は知らなくて、訳が分からなかったのだが、「バスケットボールシューズ」の略だという。せいぜい「バスケ靴」くらいにするべきだと思ったのだが、選者や他の作者たちの評価は好意的なものだったと記憶する。


さて、朝日新聞の水曜日の夕刊に「あるきだす言葉たち」というコーナーがある。夕刊のない地域では、紙面では読めないが、定期購読していれば追加料金なしでネットで閲覧可能。
毎週異なる、(たぶん)若手のプロの作家による詩、短歌、俳句が載る。
5月28日は、百瀬一兎氏による「磁針」のタイトルで、俳句が12句掲載。
その2句目。
紙面より抜粋

短夜や補助信号の黄となりぬ



ここで信号機が登場。「補助信号」って何?
まさに全体の雰囲気は分かるが、言葉が分からない。

信号機に多少詳しい者として、聞いたことはなくはないが、定義はあいまいな言葉だった。
ネットで検索してみると、いずれも道路の交通信号機関連のいずれかを指してはいるが、その対象は複数ある。一部では警察自身(特定の県警)の使用例もあるが、多くは素人たちが勝手に呼んでいる。こういう合意形成されていないものは、生成AIに尋ねると、しれっと間違った答えを返してきそう。

ざっと見て、以下の使用例があった。正式とまではいかなくても、誤解をさせないであろう用語を示す。
・矢印信号(矢印式信号機、矢印灯器)
よく見かける、矢印で表示された方向にだけ、車両が進むことができる信号。
これを補助信号と呼ぶ人がけっこういるようだが、どうして「補助」と結びつくのか、理解できない。

・音響式信号(視覚障害者付加装置、盲人用信号)や交通弱者用押ボタンなど
点灯する信号機に付随する“オプション装備”、という発想で「補助」なのか。
また、北海道警察のホームページでは、補助信号の語は使っていないが、「歩行者の横断を補助する信号機」とまとめて紹介している。
分からなくはない。

・補助灯器
専門用語。
1つの方向に対して、車両用信号機が2つ以上設置されている交差点がある。
基本的には、進行する車両から見て正面=道路左側に設置されたものがメインの信号機。それ以外の位置――よくあるのは右手前で、反対向きのメインの信号機と背中合わせ――に設置されたのが、サブの信号機。
補助灯器は、そのサブの信号機のこと。「灯器」とは信号機本体そのもののことで、「信号(機)」よりは言葉の指す範囲が狭くなろう。
2014年12月28日の再掲)右手前が補助灯器
秋田県警は入札資料で「補助灯器」の語を用いているし、交通工学の論文でも使われていた。信号機愛好家も使うが、「副灯器」とする人もいる。
なお、メインの信号機のほうは「主灯器」だと思っていたが、論文では「正対灯器」としている。

一般人は、信号機にメインとサブの区分けがあることを知らないので、補助灯器を指して「補助信号」とする使用例は、あまりなさそう。でも、知っている者としては、信号/灯器という微妙な違いなので、まぎらわしいし、俳句を始めて見た時、僕は補助灯器のことかと認識した。

・予告信号、予告灯
専門用語ではあるが、運転する人なら知っている人が多いだろうと思っていた。
信号機付き交差点の手前にカーブがあるなどして、信号機の存在に気付きにくい道路がある。運転者があわてないよう、カーブ手前などに、信号機の存在を予告するために設置される信号機のこと。予告信号である旨の表示板が添えられることが多いので、運転者にはなじみがあるはず。
全国的に2タイプある。
1つは、3色の信号機が設置され、先方の交差点本体の進行方向の信号機と、同じ色を点灯させるもの。停止線はないので、予告灯が赤であっても、そこで停まる必要はない。
もう1つは、黄色の点滅信号。信号機は、1灯、2灯(左右交互に点滅)、3灯(点滅位置はいろいろ)とバリエーションあり。

秋田県では、3色タイプと、黄色1灯タイプがある。現在は「予告灯」と呼ぶのが基本のようで、表示板もそうなっている。
秋田市内で思い浮かぶのは、いずれも3色の、横森の一ツ森公園の下の狭い道や、県道61号「(秋田)空港入口」交差点、そして八橋の「面影橋」交差点。【10月2日追記・あと牛島の愛宕下橋の通りの押ボタン式信号。】
交差点は面影橋の東詰にあり、予告灯は西詰にある。昔は、北方向の市道がなかったので、丁字路で、交差点本体も予告灯も、京三製作所の“宇宙人”25センチ版【大館の30センチ版について2021年10月23日の記事】が設置されていた。僕はここで予告灯の存在と意味を知り、交差点から離れた対岸に、仲間から離れてぽつんと点灯する宇宙人予告灯を、けなげに感じていた。
その後、横型の樹脂製の信号機に交換された(交差点本体は、道路開通やLED化で縦型など不揃いになった)。表示板はナール書体の「予告信号灯」。宇宙人時代は、手書きの同内容だったかもしれない。
その後、2013年頃に、コイト電工の縦型フラット型と、「予告灯」表示板に交換。
現在の面影橋西詰。手前が予告灯、対岸が交差点
秋田県民としては予告灯と呼んでしまうが、全国的にも、表示板の表示は「予告信号灯」「予告信号」「予告信号機」ぐらいしかないと思っていた。東京都(警視庁)では「予告信号灯」だそう(黄色点滅は表示なし)。
ところが、県によっては、予告灯と同じ信号機に「補助信号」の表示板を取り付けるところがあるのを、今回始めて知った。
具体的には、新潟県、埼玉県、千葉県、長崎県では見られるようだ。広島県でも古いものは補助信号表記らしい。←これらの各県警では「補助灯器」のことはどう呼称しているのだろう。

つまり、これが、素人や愛好家が勝手に呼んだのではなく、各県警察が公式に「補助信号」の語を用いている事例。運転者にしてみれば、警察がそう示しているのだから、疑うことなく受け入れるだろう。でも、国内どこでも通用するわけではない。同じ国の中で、都道府県によって言い回しがまったく異なるというのは、いかがなものだろうか。【23日追記・ネーミングとして、「何を」補助するのかが分かりづらい。「予告」のほうが直感的だと思うのだが。】
なお、予告灯でも補助信号でもなく、「この先信号機あり」といった表示板を付ける事例もある。


さて、俳句に詠まれた「補助信号」はどれを指すのか。
「黄となりぬ」だから、矢印や音響式などではないだろう。歩行者用でもない。
僕が連想した補助灯器の可能性はあるが、それを俳句にするとしたらマニアックすぎる。
となると、予告灯のことか。

予告灯だとすれば、常時黄色で点滅しているものを「黄と『なりぬ』」とはしないはず。したがって、3色タイプの予告灯ではないか。
面影橋のように、ぽつんと1基だけ立つ予告信号機が、黄色になった光景を詠んだとすれば、しっくりくると思う。「予告灯」や「予告信号」とすると、字足らず/字余りだし。
夜の短さと、黄灯の点灯時間の短さを掛けているのかもしれない。

作者は、千葉県生まれ、千葉市在住。だから「補助信号」を知っていて、それが当然という意識もあったのだろう。千葉県警では、黄色点滅(1灯)の予告灯には表示板を付けず、3色の予告灯に「補助信号」表示板を付けるようだ。
面影橋。赤となりぬ
個人的には、「バッシュ」と同様、「補助信号」を俳句に使うのはどうなんだろう。判断を読者に委ねたのかもしれないが、委ねられても悩む。それに、例えば「短夜や歩行者信号点滅す」ではいけないのか。「補助信号」を使うことの是非を、夏井先生あたりに聞いてみたい。
【23日追記・冒頭の通り、ケイトウ14~15本の是非や、セミの種類について論争になったのならば、どんな信号なのかについてこだわるのも間違いではないのでは。】

以上、俳句をこんなふうな視点で解釈というか突っ込んでいいのでしょうか。やはり俳句は難しい。
※信号機に関する俗称的なものとしては、2018年9月28日に「押ボタン式信号」のことを「手押し信号」と呼ぶことを取り上げた。