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竿燈の宣伝方法

先日、練習風景を紹介した、秋田市の夏祭り「竿燈(かんとう)まつり」。
東北三大祭りの1つ(もちろん四大祭りでもある)であり、秋田市を代表するイベントで、多くの観光客が訪れる。
それに恥じない、素晴らしい行事だと僕は思うが、全国的には充分にその魅力が伝わっていないと思う。

7月3日の朝日新聞「b2面(いわゆる土曜版)」の「beランキング」に、同社のwebサービスアスパラクラブ」会員へアンケートした、「一度は行ってみたい夏祭り」の調査結果が掲載されていた。
圧倒的多数の1位が「ねぶた(「青森ねぶた祭」のことらしいが、なぜかこの表記)」、以下2位が「祇園祭」、3位が「仙台七夕まつり」。そしてわずか20票差で「秋田竿燈まつり」が4位に付けた。(以下、阿波おどり、郡上おどりと続く。)
意外にも竿燈が健闘しているなと思ったが、やはりまだまだ知名度は低いと思う。
ねぶたを知らない人は少ない(弘前などのね“ぷ”たとの混同や誤解も多々あるはずだが)と思うが、竿燈は「知っている人は知っているが、知らない人はまったく知らない」のだと思う。

旅行で秋田市を訪れた方が、ブログに秋田駅中央改札口前に飾ってある竿燈の写真に、「これは秋田のお祭りなの?」とか「ちょうちん祭り?」といったキャプションを付けてアップし、竿燈を知らないことも少なくない。
また、「秋田といえばナマハゲ」というのがあまりにも定着しすぎており、ナマハゲが秋田市内、もしくは秋田県内一円で行われている(実際は主に男鹿半島周辺の行事)と思われていることもあって、竿燈の存在感が薄い。
もっともっと、竿燈の宣伝が必要。



ところで、竿燈は「動」と「静」、2つの側面で楽しめるお祭りだと思っている。
当ブログの昨年8月頃の記事をご覧いただいても分かっていただけると思うが、改めて説明したい。
 ※「秋田市所蔵」と文字を入れた画像は、秋田市広報課のサイト(秋田市写真館:http://www.city.akita.lg.jp/city/pl/pb/photo/a/a01.html)で、フリーで提供されている画像を使用させてもらいました。

まず「静」。これは少し離れて遠目に見たり、沿道のビルの上から見た場合。
ろうそくが灯ったたくさんの提灯が付いた、たくさんの竿燈が、ゆらゆらと揺れて、「光の稲穂」と形容されるのにふさわしい姿。
お囃子や歓声のどよめきも聞こえる。「遠花火(とおはなび)」ならぬ“遠竿燈”とでも呼びたくなる、情緒あふれる光景だ。


そして「動」。遠くからは穏やかに見える竿燈も、その1本1本はとても大きくて重く、それを1人の人間(差し手)が操っているのだ。
腰・肩・額などに載せ、風で倒れることもあり、スリリング。

この「動」と「静」、2つの魅力を伝えることが、竿燈の宣伝に不可欠だと思う。
イベントとしての竿燈まつりを主催する「秋田市竿燈まつり実行委員会」では、毎年ポスターを制作し、県内外で掲示される。
毎年、なかなか目を引くデザインだと思うが、今年のは特にしゃれたデザインだと思う。
2010年版ポスター
昔のアニメ「Dr.スランプアラレちゃん」のエンディング並みに大きな満月が目立ちすぎる気もしなくはないが、駅など他のポスターも並ぶ中では、視線を引きつけるのにいいだろう。
お月様の中には、肩に竿燈を載せる差し手のシルエット。下は広角で撮影した竿燈会場(二丁目橋付近か)。
このアングルの竿燈の写真は、今まであまり見たことがないと思うが、ぱっと見ると「静」だし、近づいてよく見ると、人が揚げているのも分かる。

実行委員会のサイト(http://www.kantou.gr.jp/data/poster.htm)には、2000年以降の歴代のポスターが掲載されている。
いちおう、どの年も、「動」と「静」は伝わるデザインだと思う。また、上記、秋田市広報課のサイトでもそれが分かる写真がほとんど。さすが主催者だけに、その点は分かっているようだ。




さて、最近、首都圏などで、電車を1本まるごと貸し切って、1つの企業・商品や団体などの広告で埋め尽くしたものがある。JR東日本などでは「ADトレイン(アド・トレイン)」と呼んでいる。

観光PRにも使われ、現在は秋田を含む夏の東北観光の広告電車が走っていると報道されていた。
一昨年からこの時期に、「東北観光推進機構」とJR東日本が行っているもので、今年は6月21日から7月18日まで、山手線の2編成(=2本の列車という意味)で実施されているそうだ。同機構によれば「1週間で2700万人が見る」とか。

なお、JR東日本関連会社の広告代理店「ジェイアール東日本企画」のサイトの料金表によれば、この条件での広告料金は「15,000,000円」。
1500万円! 高いと見るか、安いと見るか…(あくまでも掲載されていた同条件での値段であり、実際にこの広告がこの値段かどうかは分かりません)


「東北観光推進機構」とは聞いたことがなかったが、東北各県(東北6県+新潟県)が官民一体となって観光戦略を推進し、観光振興・経済発展に寄与しようと2007年に設立された組織のようだ。
経済団体のエライ人や観光関係企業の東北支店長、各県の観光部長などが役員を勤め、各県庁やその観光連盟、経済団体、銀行や新聞社(なぜか放送局はない)など104の組織が会員になっているらしい。
今回の広告電車では、7県分の観光写真と東北新幹線新青森延伸の広告を車体側面に貼っている。


先日、東京駅のホームに出ると、ちょうど山手線内回りの電車が発車して行った。その電車、
竿燈!!
例の広告電車だった!
 ※以下、動いている電車を天気の悪い日に撮影したため、ブレたりボケたりした写真があります。
山手線には電車が52編成(=52本)存在するようだが、東北の観光PR電車は2本。単純計算で26分の1の確率に一発で当たったわけで、ラッキー!
でも、行ってしまってよく見られなかった。

すると、となりのホームに京浜東北線の大宮行き快速電車が入ってきた。
京浜東北の快速は昼間だけ運転され、山手線と併走する区間の一部駅を通過する。これに乗れば追いつけるかも。と思い、乗った。
5駅を通過し(秋葉原・上野のみ停車)、田端駅には広告電車の1本前を走る山手線と同時に到着! いつの間にか追い抜いていたのだ。
やるじゃん! 京浜東北線快速!!(画像は各駅停車ですが)
田端駅で3分ほど待つ。
来た
前面に「2010東北絵巻物語」と表示がある。

車両側面では、窓がない戸袋部分を中心に広告が貼られているが、2つのタイプがあるようだ。
白神山地秋田県)と東北新幹線延伸
 ※白神山地の写真には「※写真の場所は世界遺産指定区域外です。」と注記があった。
祭りや観光地のほぼ正方形の写真や、「はやて青森延伸」「はやぶさデビュー」の告知が、目の高さよりやや下に貼られている。

もう1つは、
福島の「相馬野馬追(そうまのまおい)」

岩手の「北山崎」
窓ガラスの位置(視線のやや下)に祭りや観光地の名前が大書きされ、提灯や葉っぱの中に日程や解説(「騎馬武者達の勇壮な戦国絵巻」など)が小さく記載されている。
その下、黄緑の帯より下の部分(ひざ丈くらい)には、ドアの半分にもかけて、その写真が出ている。写真は横長で絵巻物の形をしており、写真の中には共通で「壮観なり、夏の東北。」と書かれている。

この2種類の形式の広告が交互(?)に配置されている。
弘前ねぷたと下北・仏ヶ浦

このデザイン、皆さんはどう思われるでしょうか?
個人的には、地味すぎると思う。側面ほぼ全面を広告にするとか、写真をもっと大きくすることもできるはずなのに、あまりに控えめだ。
視覚情報があふれる都心においては、まったく目立たないと思う。
こんな地味にしたのには、何か理由があるのだろうか? 1500万円もかけてこの程度じゃ、無駄遣いだ。

そして、窓より下のひざ丈に小さめの写真を配置したのには、一体何を考えてるの? とデザインセンスを疑いたくなる。
人が多く停車時間が短い駅で、そんな所に目を向ける乗客がどれだけいるだろうか。特にこの電車は、「裾絞り」といって車体が下側に向かってカーブしてる形状。そのカーブ部分に写真を貼っているわけで、しゃがみ込みでもしないとよく見えない。
それに、恵比寿駅を皮切りに新設されている転落防止の「ホームドア」があるホームに停車中は、広告がホームドアに隠れてほとんど見えなくなってしまうのではないだろうか。
もっと高い位置に、大きな写真を掲載するべきだと思う。


ちなみに、すれ違った他のADトレインで、目を引いたものがあった。
富山県への夏の観光客誘致として、(社)富山県観光連盟と富山県が実施している「夏かしい、富山へ。」のADトレインだった。6月14日から7月11日まで2編成で実施されているから、東北絵巻物語のライバルだ。

上の画像は富山県庁サイト「報道発表一覧」(http://www.pref.toyama.jp/cms_press/2010/20100608/00004611.pdf)より広告の一例
上のように「おわら風の盆」を踊る人の姿が車体に散りばめられているなど、スペースを有効に使い、かつ写真が大きくて見やすい位置にある。
僕は一瞬見ただけだったが、富山を宣伝していることが瞬時に分かった。インパクトが強いのだ。
それに引き替え、東北のADトレインは…



さらにがっかりしたのが、その中の秋田の竿燈の写真。
赤提灯の中には「巨大な竿燈を操る伝統の妙技」とあったが。
ドアが開くと写真が半分しか見えなくなるのもデザイン的にちょっと…

写真の拡大
提灯の紋から判断すると、昨年紹介した、「秋田市役所竿燈会」(秋田市職員などの有志が竿燈に参加する団体)の竿燈だ。
気にくわないのはこの写真の構図。
チョウチン(と竿)しか写ってないじゃん!
しかも、竿燈1本につき46個ある提灯の一部は写真からはみ出ていて、竿燈そのものすら完全に写っていない。

仮に、竿燈まつりをまったく知らない人がこの写真を見て、「竿燈」がどのようなものか理解できるだろうか?
竿燈を知らない人に、それを知ってもらうのがこの広告、この写真の目的のはず。
この写真を見て、竿燈は高さが10メートル以上あること、それを1人の人間がさまざまな技を凝らして揚げていること(上記の「動」)、そんな竿燈がたくさん集まって「光の稲穂」になること(上記の「静」)など、伝わるはずがない。
広告が何千万人の目に入ったとしても、こんな写真では、「秋田にはこんなお祭りがあるんだ。行ってみたい!」と心にとどめてくださる方がどれだけいるだろうか。

《例》下の2枚の写真は、同じ写真をトリミングしたもの。
 
左は差し手が写っていて全体的な雰囲気が分かるが、右はただ「チョウチンがぶら下がってる」だけに見えないだろうか。
電車の広告は、この右側の写真と同じに思える。


巨大な竿燈を操る伝統の妙技」という文字なんかより、せめて、人(差し手)を入れてくれれば、竿燈の大きさと「技」をイメージしてもらえただろうに…

ひょっとして最初からこんな写真だったのでなく、広告としてのデザインの段階でトリミングされてこうなってしまったのかもしれないが、そうだとすればそれは広告を出している側、すなわち仙台を中心とした東北地方にすら、竿燈の魅力が理解されていないということではないだろうか。

広告主の「東北観光推進機構」には、竿燈と深く関わる秋田市や(財)秋田観光コンベンション協会は加盟していない。だから、竿燈の情報・魅力が機構側にうまく伝わらなかったのかもしれない。残念だ。
富山のように、電車の高さいっぱいに思い切って竿燈を描いたら、見栄えがして宣伝効果も高くなると思うんだけどねぇ~


【2011年9月24日補足】車体いっぱいにラッピングできないのは、東京都の屋外広告物条例で規制がされているからのようです。こちらの記事で。