こういうのは昔からあったのかもしれないが、ネット上で見られるようになって、従来より多くの媒体の報道を目にする機会が増えたことが原因かもしれない。ポータルサイトやツイッターなどで転載されて、誤解が広がる恐れもある。
例をいくつか。※いずれもネット版での報道に基づくもので、実際の紙面等では誤解のない言い回しに改められている可能性もあります。
●その人が後任?
「サザエさん」の磯野波平役でおなじみの声優・永井一郎さんが亡くなり、葬儀が行われた。
それを伝えるデイリースポーツ亡くなった後、1月30日に行われたアフレコ(録音)において、「永井さんの代役はスタッフが務めた」と本文、見出しとも伝えている。
この記事(だけ)を読めば、多くのサザエさんファンは、びっくりというか愕然とするのではないだろうか。
45年間に渡って永井さんが務めてきた役の後任がプロの声優ではなく、スタッフなんて!
ほんとうのところは、「波平役の後任は決まっていないため、今回の収録では仮にスタッフが担当した。後任が決まり次第、波平部分だけを改めて収録する」ということらしい。(今朝のフジテレビ「とくダネ!」で小倉さんがそう話したらしい)
つまり、30日のアフレコでは「永井さんの代役はスタッフが務めた」というより、「永井さんのセリフ部分以外を収録した」というほうが適切だろう。どうせスタッフの声は“上書き”されてしまうのだから。
今回の報道は、葬儀後の加藤みどりさん、冨永みーなさんのインタビューを元にしているらしいから、インタビューでは「スタッフが代役をした」ということにしか言及せず、それをそのまま報道したということも考えられる。
だけど、それだけをそのまま読めば「え!? 後任はスタッフなの?」と誤解というか疑問を読者に抱かせることは、デイリースポーツの記者は考えなかったのだろうか。
その場で質問できないのなら、フジテレビに問い合わせれば分かりそうなものなのに。
読者の視点に立っていない記事だと思ってしまった。
●苦い文?
gooのニュースに転載された、昨年12月12日スポーツ報知。
舞台の主演女優と製作者が、降板するしないでモメている一件裁判が始まり、製作者がインタビューに答えて「和解してもいいが、そっちの言いなりにはならないぞ」という趣旨の発言をしていて、そこが見出しにも使われている。
それが「ビタ一文まけないぞ」。
僕は見出しを最初に目にした時、「ビター文まけないぞ」すなわち「びたーぶんまけないぞ」「Bitter文まけないぞ」と読んでしまい、「苦い文章」って何? 「まけないぞ」というのは「撒けない」?
じゃあ、「告発文や暴露本みたいなものを流布させるようなことは許さないぞ」ということをカッコつけた(?)表現か? などと勘ぐった。
よく読めば何のことはない「(和解金は)鐚一文(びたいちもん)負けないぞ」ということだった。明朝体や毛筆系書体なら区別できたかもしれないが、ゴシック系書体では「ビタ一」は「ビター」と読んでしまう。
漢字の「鐚」は読めないから仮名書きなのは分かるが、カタカタよりもひらがなで「びた一文」のほうが分かりやすいのではないだろうか。さらに「負けない」をどうしてひらがなにしてしまったのか。
●誰が誰から
時事通信転載のgooニュース2012年6月6日上の大きな見出しに「K・ギルバート氏会社から横領か」。gooのトップページのリンクにはこれだけが表示される。
これだけ読めば、多くの人が「K・ギルバートという人物が、自分が勤務する会社から横領した」というニュースだと思うことだろう。
「K・ギルバート」とは、かつて「世界まるごとHOWマッチ」の回答者だったケント・ギルバート氏。
下の見出しと記事を見れば、「ケント氏が経営する会社から横領した人物が逮捕された」という内容。ケント氏はむしろ被害者だったのに、最初の見出しでは犯人かと誤解させてしまう。
見出しは文字数が限られているし、ネットでは注目させてクリックさせるために、あえて目を引く内容にしているということもあるのかもしれないが。
せめて「K・ギルバート氏横領される」とかにできないのだろうか。
ネットの見出しでは、以前「山口もえ夫の…」というのがあった。
「タレント山口もえ、の夫」という意味なのだが、「山口もえ夫」という人物を連想してしまった。森田拳次の漫画「丸出だめ夫」みたいな。
●名前より肩書き
青森県南部地方中心のデーリー東北。昨年10月15日。(画像の11月20日はキャプチャした日付)
「旅番組で女優藤田さん来八」「来八」は「らいはち」かと思うが、「八戸に来る」という意味。「来日」のローカル版で、全国各地にある表現。
それより気になるのが「女優藤田さん」。
結論から言えば藤田弓子さんのことなのだが、どうして「藤田弓子さん」でなく「女優藤田さん」にしたんだろう。文字数は同じなのに。
藤田姓の女優といえば、藤田弓子か藤田朋子が代表的だろう。お2人なら名前を表記するだけで、女優だと認識する人が多いはず。わざわざ「女優藤田」なんて書いたら、あまり知られていない「別の女優の藤田さん」が来たのかと思ってしまう。
かえって失礼な表記ではないだろうか。
●誤字
最後は、青森の陸奥新報から誤字2連発。
昨年2月3日「弘前の私立小中学校」弘前に私立の小学校はないですね(中学校はある)。本文の通り「市立」の誤り。
2012年12月4日「支社人」?交通死亡事故多発非常警報発令期間中の交通事故の件数を取りまとめた記事。
本文からすれば「事故316件、死者1人」としたかったのだろう。死者数の「1」を入力し忘れ、さらに「支社」と誤変換したことになる。
陸奥新報では、弘前市の「禅林街」を「全林街」としたこともあって、初歩的な誤字が目立つ気がする。しかも、それがそのままずっとサイトに掲載されることも少なくない。※続きはこちら
プロ/アマ問わず、文章を書く者としては、誤解されない(されにくい)表現、誤字のない文章を心がけたいものです。
※次の更新は土曜日になるかと思います。