広く浅く[blog.goo.ne.jp/taic02より移転]

https://blog.goo.ne.jp/taic02 から移転。秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記など、広く浅く、時には中途半端に深く、いろいろと。

野原ひろし秋田出張

テレビ朝日のアニメ「クレヨンしんちゃん」。
しんちゃんの父・ひろしは秋田出身で、秋田に強烈なキャラクターの祖父・銀の介がいる。そんなわけで、時々秋田の話がある。
このアニメは、いい加減なようでいて、しっかりと作られているところもあり、今年2月には秋田の凧が登場した。

11月3日、17日、24日の3回にわたって「秋のスペシャル企画」として、各回の半分の時間が秋田が舞台の話だった。
内容としては、ひろしの勤める会社が秋田のデパートでネパール物産展を開催することになり、1か月間、実家に滞在して単身赴任(長期出張のほうが適切な感じもするけれど…)するというもの。最後は任務を終えたひろしをみさえ、しんのすけ、ひまわりが秋田新幹線に乗って迎えに行く。
3日の「単身赴任が決まったゾ」は単身赴任が決まるまでの話なので秋田の場面は(ほとんど?)なく、17日「単身赴任はお気楽だゾ」、24日「単身赴任はドキドキだゾ」が秋田での話。
3話とも脚本・清水 東。30年ほど前からいろいろなアニメやバラエティ番組の脚本を手がけていて、昔は「サザエさん」にも参加していた。【12月1日追記・現在(2010年から)のドラえもんも担当。】
本編の前後にも関連した短編(ムトウユージ作)があった。


以下、我ながら無粋ですが、いろいろと。
舞台となった土地について。
ひろしの実家があるのは、大仙市大曲近辺の農村部。
過去には、秋田新幹線開業間もない1997年8月15日放送の#808「満員こまちで秋田へ行くゾ」で、大曲駅で新幹線を下車していた。
最近の話では、所在地が大曲だとの言及や風景が描かれることは、ほとんどなくなっており、今回も同じ。

ネパール物産展が開催されたデパートの所在地がどこなのかも明言はなかったが、ストーリーから考えれば秋田市中心部の可能性が高い。
秋田市内だとしても、車でもJRでも(銀の介さんに大曲駅まで送迎してもらうなどして)通勤は不可能ではないだろう。最悪、秋田市内のホテルに泊まることもできる。

秋田へ向かったみさえさんたちを、銀の介が車で迎えに行ったのだが、その駅は秋田駅
そこで仕事の後に飲み歩いていたひろしとばったり出くわすというストーリー上、大曲駅より秋田のほうが都合がいいのだろう。「えきねっとトクだ値」なら、秋田まででも大曲まででも同額だから、おカネにシビアなみさえさんも納得。銀の介じいちゃんの運転距離が長くなるだけ。
【12月1日追記】こまちは、線路の構造上、全列車が大曲駅に停車する。大曲で降りずに秋田駅まで乗った理由としては、「元から実家は大曲駅秋田駅の中間地点付近(その一帯も大仙市)にあり、大曲と秋田どちらでも迎えに行く距離は違わなかった」「実は実家が移転・引っ越ししており、秋田駅のほうが近くなった」といったことも考えられる。


絵と現実の違いについて。
ひろしとみさえたちそれぞれが秋田へ向かうため、秋田新幹線「こまち」に乗車しているシーンがあった。(帰路はなし)
1997年の話では、当時のE3系のこまちに乗車し、話題になったテレビCMを意識した会話が繰り広げられるなどしていた。
数年前には、当時はまだ運行されていた寝台特急「あけぼの」をモチーフにしたと思われる、「おたけび」なる列車で帰省する話があった。

今回は、「“秋田”新幹線」や「こまち」といった描写はなかったが、E6系の車内外がなかなか忠実に描かれていた。鼻がちょっと短かいなど若干おかしかったけれど。
  
座席肩のとっての形状と色が違い、車内の通路ドアの稲穂の絵は省略。
再掲
最近は、商品に鉄道車両をデザインする場合、契約を結んで使用料を支払って「JR東日本商品化許諾済」と表示される(プロパティライセンス)。
アニメではどうなっているのか知らないけれど、オープニングのクレジットにはそれらしき表示はなかった。
少し前、かすかべ市の消防署を見学した話では、「取材協力 東京消防庁西東京消防署」と表示があった。

車内では、「きりたんぽ弁当、いぶりがっこハンバーグはいかがですか」と車内販売が来るシーン。
秋田駅の関根屋では、「あったけぇきりたんぽ弁当」発売していたが、今もあるだろうか。
いぶりがっこハンバーグ」ってのはなんだ?! ハンバーガーじゃなくハンバーグだそうだから、刻んだいぶりがっこを混ぜたハンバーグとか? アリかも。

24日では、秋田の手前をE6系が走行するシーンがあった。

そこでは、複線の右側を走っていた。日本の鉄道は左側通行だけど、秋田新幹線の大曲-秋田間(一部を覗く)はレール幅が違う単線が並んでいる形で、下り列車は右側通行に見える。アニメではレール幅が両側とも同じように見えたけどね。
同じシーンでは、線路沿いに竹林らしきものがあったけれど、秋田では、竹林はあまりない。
線路ギリギリに田んぼらしきものもあるが、秋田にしてはチマチマしたというか、スケールが小さい感じ。関東郊外の沿線風景を転用したのではないだろうか。実際のこの区間の沿線風景は、もっとダイナミックな田んぼか杉林ってところじゃないでしょうか。

3日の短編では、フル規格区間と思われる高架上を走るE6系のシーン。はっきりとは分からないものの、おそらく右側通行になってしまっていた。


17日放送では、「大ネパールフェア」が開催されたのが「秋田ふたばデパート」であることが分かる。
クレヨンしんちゃんでは、昔は養老ならぬ「老衰の瀧」という居酒屋など、店や企業のパロディーがよくあったけれど、最近は控えめ。作者が亡くなってアニメオリジナルの設定になり、昔ほどふざけられなくなった事情があるのだろう。
例外は「サトーココノカドー」で、今年の放送25周年を記念して、イトーヨーカドー春日部店が、期間限定で本当に(看板やチラシの表示において)サトーココノカドーになったという。

というわけで、秋田ふたばデパートは実在の店ではない。
原作漫画の出版元である「双葉社」からの借用だと思われ、ほかの場面でも「ふたば幼稚園」などよく登場する。
そういえば、ひろしの勤務先は「双葉商事」。ということは、秋田ふたばデパートは双葉商事の系列なのかもしれない(双葉商事の業務内容が分かる話って、今回が初めてかも)。

描かれた秋田ふたばデパートは、高層で、向かって左にシースルーエレベーター2基と看板があり、壁面が格子状のガラスになっている外観。
秋田駅前の「秋田オーパ」に改装される前の、ジャスコ秋田店→秋田フォーラスに、どこか似ていなくもないような感じ。ただ、両隣に少し描かれた建物は実際とは違う。
(再掲)旧看板時代の秋田フォーラス


ひろしが秋田の同級生たちと飲みに行くのは、どちらも同じアーケード街にあると思われる居酒屋「のめや」と「コスプレスナック ナマハゲランド」。これは完全オリジナルでしょう。

アーケードは、車道に面した歩道部分に低い屋根がかかる、古そうなタイプ。秋田では、今は撤去された広小路の、さらに1世代前のアーケードがこんな感じだったけれど、現存しない。緩くカーブした道路形状からしても、まったくの創作だと思われる。
雪国にはアーケードがあれば歩きやすくて助かるのだけど、一方で積雪に耐えられずに倒壊して、通行人がケガをした事故もあった。


みさえさんたちが降り立った秋田駅は、東口。
車で迎えに来るには、西口より都合がいいものの、東側には商店街もなく飲み屋も少なく、ひろしが飲み歩いて東口まで来るとは実際には考えにくい。

秋田駅東口は、駅舎はとても忠実に描かれていた。北隣の立派なビル風の秋田中央道路地下トンネルの換気所らしきものもちらりと登場するが、南隣のアルヴェは映らず。
一方、実際は路線バスの待機場になっているところでみさえさんたちが迎えを待っているなど、周りの光景や構造はまったく異なる。
秋田駅」の看板は、時計とJRマークがなくなり、電車のアイコン。窓枠や屋根の色が違う

みさえさんたちが立っている場所は、実際はバス待機場所のど真ん中
奥の駅舎壁面の「東口」の左のオレンジ色の曲線は、実際には自由通路の愛称「ぽぽろーど」と表示されている。
その前の屋根があるところはタクシー乗り場~路線バス乗り場で、ほぼ忠実。
(再掲)実際は写真左の駅舎南側が一般送迎場所


最後は、セリフ。
銀の介夫妻は、以前から秋田弁らしきものを話すが、ほぼデタラメな秋田弁。
今回は、ひろし自身や、ナマハゲランドのマスターも秋田弁を使っていたが、それはやっぱりイマイチ。

一方、ひろしの同級生3人は、とてもリアルな秋田弁に聞こえた。
クレジットによれば役名/声優は、浦野 薫/天野宏郷、同級生A/佐々木啓夫、同級生B/いずみ尚。同級生Bは17日のみ、他の2人は17・24日に登場。
どこの学校の同級生かは不明。名前がある浦野薫は、どういう身分か不明だが、ひろしと同じ衣装でネパール物産展を運営する側。名前は、女装趣味があるので「裏の顔」が由来かな。

調べると、この3人の声優は、いずれも秋田県のご出身。県内のどこ出身かは不明だが、さすが上手。ついでに他のキャストの方言指導もすればよかったのに。
セリフが多かったこともあると思うが、中でも浦野役の天野宏郷さんの秋田弁は秀逸。まだ若い方のようだが、プロフィールの特技が秋田弁となっているのに偽りなし。
「ゆんべはたのしっけな」、「せばそろそろけぇるべ」、(着替えるように促されて)「いったいった」なんか、秋田弁を知らない視聴者は理解できないのではと心配になったけれど、実際にそんな場面ではそう言っても(秋田弁を理解できる人には)まったく違和感がない。台本や文字放送の字幕がどうなっていたのかも気になる。
※上記の意味は「昨夜は楽しかったな」「じゃあ、そろそろ帰ろう」「いいよいいよ」。